『暦と占いの科学』(その1)

この話、書くとしてももっと後にするつもりだったのですが、「歴史読本」十月号
話題と関連があるので、このあたりで記録に残します。

先日お亡くなりになった西山峰雄さんが、以前『暦と占いの科学』の正誤表を
出すべきとおっしゃっておられましたが、実は昔、2000年2月29日に、BBS
方でとりまとめたことがあります。

『暦と占いの科学』の初版発行時、ざっとチェックして文章化したもの
を、抜粋すると以下のようになります。
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(1) P.13前から1行目より
>やがて太陽の光合成によって、地表の水のなかに生命体が宿り、
光合成は、生命の誕生よりあとになって開始された。

(2) P.13後ろから2行目より
>絶対温度というのは、物理学で考えられる最低の温度でマイナス二七三・一六度
>Cであるが、
絶対温度はたぶん絶対零度と書きたかったのでしょう。また、273.16 は 273.15
のまちがい。たぶん水の3重点との混同。

(3) P.14前から8行目より
>宇宙の臨界密度、(中略)、宇宙の密度がこれより小さいと宇宙は膨張し、大き
>いと収縮することがわかっている。
膨張し → 永遠に膨張し続け
収縮する → やがて収縮に転じる
(ダークエネルギーが発見されて、記述自体が時代遅れになりました)

(4) P.18後ろから6行目
>『塵劫記』(寛永四)
『塵劫記』の初版は寛永四年だが、示されている大数の位取りは、寛永十一年版
のものである。文脈上まちがいではないが、誤解を与え易い。

(5) P.46前から4行目
>西暦四世紀にキリスト教を国教としたローマ皇帝コンスタンティヌス一世が、
国教の定義って何? コンスタンティヌスの段階ではキリスト教を公認した
だけで、キリスト教以外の宗教を禁止したのは後のテオドシウスの時代。

(6) P.46後ろから7行目より
>それ以来、日月火水木金土というカシウスの定めた一週間の順序は、今日まで一
>日のずれもなくつづいてきているのである。
さらりと嘘を書く ^^; カシウスは、すでに西暦紀元前後から行われてきた日月火水木金土の
順序を解釈・説明しただけで、カシウスが定めたわけではない。

(7) P.46後ろから4行目
>日本でもユリウス暦採用の際、明治五年十二月二日のあとを二十八日間もとばし
>て翌十二月三日を明治六年一月一日としている。
ユリウス暦の定義が一般に行われているものと異なる。一般には暦日まで一致
しなければ、ユリウス暦とは言わない[1]。著者は「4年ごとに1回閏年にする太陽暦」
のことを「ユリウス暦」と総称して独自に定義しているようである。実際には、
エチオピア暦もこれに該当し、彝族の暦も該当する可能性がある。

(8) P.48前から11行目
>(2) 閏年の一月は m=13、二月は m=14 とする。閏年でも三月以降は m はそのま
>までよい。
これは、曜日の計算式の説明の一部。このままでは、閏年の三月以降の曜日は、
前年の曜日と同じになってしまう。

(9) P.62前から5行目より
>玄宗皇帝が毘沙門天の加護をうけ、西方の異民族を破ったという故事にならっ
>て、聖徳太子が日本最初の寺刹四天王寺を建立し、蘇我馬子をうち破ったという
>エピソードもある。
聖徳太子は玄宗皇帝よりも前の時代の人物である。蘇我馬子をうち破ったというのも妙。
立ち読み[2]で確認したところ、改版では、蘇我馬子が物部守屋に改められています。
(それなら初版の記述のソースはなんだったのだろう?)

(10) P.122前から7行目より
>三三一九年たてば、ほぼ一日の誤差になる。
グレゴリオ暦の誤差に関する記述。このブログで何度もとりあげた問題です。

(11) P.122後ろから1行目より
>一八七二年十二月二日(明治五)の翌日を明治六年一月一日として、ユリウス暦
>を取り入れたが、それから二七年後の1900年(明治三三)に初めてグレゴリ
>オ暦を採用したのである。
この「ユリウス暦」も著者独自の特殊な定義による。

(12) P.126前から4行目より
>ビルマ暦は純太陰暦で、一年は三五四日からなり、奇数月が三〇日、偶数月が二
>九日となっている。
直後に十九年に七回閏月を入れるとの記述があり、同一著作内部で矛盾している。

(13) P.143前から5行目より
>ピタゴラスの聖標は星形五角形で、(中略)またそういえば、《ダビデの星》も
>同じ形をしている。
《ダビデの星》は正三角形を2つ重ねた形をしている。

(14) P.183前から6行目より
>現在私たちは《定時制》を採用しているから、午前二時といえば、その瞬間を示
>すことになっているが、古くは二十四時間を十二支で割った一二〇分間(二時間)
>を一つ単位として漠然と指す《不定時制》であった。それゆえ「子の刻」という
>のは午後十一時から午前一時までの二時間を示していた。
この《不定時制》も著者独自の特殊な定義である。一般には《不定時制》とは、
夏と冬、昼と夜で一刻の長さが変わるような時制をいう。

(15) P.214前から10行目
>農耕が中心の漢民族にとって、西は山脈と砂漠、北は自然の防壁ともいえる寒い
>ツンドラ、南は農耕の異民族の土地である。
北には草原があり、さらにその北にタイガがある。ツンドラはさらにその北。
ツンドラは中国とは関係ないはず。

(16) P.248の表
Neptune と Uranus が逆
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あまりに誤りが多いので、初版を読んだ当時 著者に手紙で連絡を取りました。
結果、聖徳太子の話のように、後の改版で修正されたものもあるようです。しかし、
私の知識も限定されているので、他の人が読めば、また別の問題に気づくのでは
ないでしょうか。

[1] ユリウス暦である「必要条件」を満たしているが「十分条件」を満たしていない
[2] 当時、買ったり借りたりして再版を読むほどの本には思えませんでした。
  また、初期の版も古書で流通しているので、初版に対するコメントを残して
  おくのが最も適切だという意味もあります。

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