『暦と占いの科学』(その2)

インターネットを検索してみると『暦と占いの科学』を引用しているところも多い
ようです。しかしこれは危険です。昨日のまとめを見ると単なるケアレス・ミスと
いうより、著者の資料収集のしかたに問題がある(“ウラ”をとる作業をきちんと
行っていない、あるいは自身の思いこみをそのまま書いてしまう)ようです。
したがって、『暦と占いの科学』に関しては、他の文献で“ウラ”がとれない記述は
アブナイ![1]というスタンスが必要かと思います。婉曲に言うと、『暦と占いの科学』を
利用する場合は、必ず他のソースと突合せて情報の“ウラ”をとってからにすべきです。[2]

例えば、“ウラ”がとれない記述に以下の説があります。

(17) P.34前から9行目から
>シュメール人が使っていた重さの単位は《ミナ》であり、アッカド人の重さは
>《シュケール》であった。それがアッカド人のシュメール征服によって入り混じっ
>たとき、彼らはおたがいに一つの物の重さが同時に二通りに測られ、しかも一つ
>は他の六〇倍であることを現実に知らされた。

根本的な疑問として、《ミナ》と《シュケール》の重さの比が 60:1 だったとしても、
どうやって、その比が“偶然”であることを確認したのでしょう?[3] 仮に五千年前の
文章が出土して、そこに「偶然だ」と書いてあっても、それは、その文章を書いた
書記がそう思っていたという以上の証拠にはなりません。“偶然”であるというのは
本質的に証明不可能(悪魔の証明)に思えます。

この説は、結構引用されているようで気になっています。

また、他の間違いとは質が違いますが、

P.12後ろから5行目より
>《ビッグバン》Big Bang という超大爆発を起こして、そのかたまりが周囲にと
>び散り、猛烈なスピードで四散していった。

P.13後ろから9行目より
>二〇〇億光年にある星が私たちの空間の限界で、それより先を考えることはでき
>ないということなのである。

P.14前から5行目より
>こうして二〇〇億年まえに最初の時間が始まり、二〇〇億光年という実在の空間
>があったことになり、はじめてそのなかで空間と時間を考えることが許されるの
>である。

“周囲”という記述からすると、著者は素朴なユークリッド幾何学でもって、
世界を理解しようとしているかに見えます。これも「変な記述」に入ると思います。

[1] 「Science からの引用」にも関連しますが、トレーサビリティという意味でも
  出典を示すことが非常に大事であることがよくわかります。
[2] 直裁にいうと「利用できない」、あるいはより正確には(他の資料の方で確認が
  済むので)「利用する意味がない」ということです。
[3] ひとつの想像としては、語彙分析の結果、アッカド語にとって《シュケール》は
  固有語、《ミナ》は借用語との結論があったのかもしれません。しかし、《ミナ》
  という名前を借用する際に、大きさも60進法など、当時の人々にとって使いやすい
  ように調整[4]されたでしょうから、それを根拠に“偶然”と判断することはできません。
  もし60進法にこだわりがなく、“偶然”《ミナ》と《シュケール》の重さの比が 60:1
  だったならば、64:1 に調整される可能性が高い。当時は、重さは天秤で量るもので、
  天秤を平衡させつつ2分割を繰り返して分銅を作ったでしょうから。[5]
[4] 例えば、シリングとペニーの比は、昔は 12:1 でしたが、今は調整されて 10:1 です。
[5] ポンドとオンス、日本の江戸時代のお金の単位など天秤を前提としたと思われる
  2進法系の単位が洋の東西を問わずみられます(相似)。
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[前回の補足]
 命題論理[6]では下記のようになります。
  元命題 真 ユリウス暦は4年に1度閏年を置く
  逆    偽 4年に1度閏年を置くならユリウス暦である     (著者がやった間違い)
  裏    偽 ユリウス暦でなければ4年に1度閏年を置かない  (逆と同値)
  対偶  真 4年に1度閏年を置かないならばユリウス暦でない (元命題と同値)

[6] ネット検索で確認したところ高校1年生の数学で必修単元として履修するそうです。。

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